下にあげた表紙の写真をご覧あれ。これこそホモサピエンス〔ヒト)の集団の姿。その勇敢さと強さと野蛮さを雄弁に物語っているではないか。「宗教は人類生存のために(このように)進化してきた」ことを、著者は生物学、社会科学、宗教史を縦横に駆使しながら説明する。科学ジャーナリストが書いた本だけあって、一つの分野に閉じこもることがなく、異論が存在する学説〔仮説〕も公平に客観的にそれぞれ紹介して行く。裨益するところ多大。
印象深かった点は多々ある。例えばアフリカを少人数で脱出したホモサピエンスは身体能力的に同等以上の力を持ち圧倒的多数でヨーロッパに君臨していたネアンデルタール人を如何にして食い尽くすことに成功したのかなど。考古学の成果。35000年前のホモサピエンスの遺跡〔ドイツ〕から角笛が発見されたのだ。当時のホモサピエンスは既に音楽を持っていた。音楽はすなわち舞踏であり、舞踏は狂信的高揚(トランス)による集団の結束をもたらす。それが宗教。それでもって上の写真のように結束し一気にネアンデルタール人を壊滅させたのだ。宗教の力はすごい。現代社会でも〔旧日本帝国軍隊の例をとるまでもなく〕狂信的原理主義的集団は強いのである。
同時に宗教は集団内部の福祉にただ乗りする「フリーライダー」を排除したり〔厳しい戒律と通過儀礼、さらに村八分〕、商取引のベースとなる集団内部の信頼を生み出したりして〔ユダヤ人のダイヤモンド商人〕、資本主義商取引社会の発展をもたらすという平和的メリットもあった。
このような宗教の特性はヒトが文化的に後天的に修得したものではなく、原型は類人猿の時代から存在し〔道徳〕、それが遺伝学的に進化してきたものであるという。少なくともそういう学説が現在では主流であるらしい。ダーウィンの「集団選択」理論の復活だ。また無神論者のリチャード・ドーキンス〔『利己的な遺伝子』の著者〕に対する痛烈な批判ともなっている。とても知的刺激に富む本で、大いに勉強になりましたです、ハイ。
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